北海道・東北地方では、厳しい冬を乗り越えるための保存食である「にしん漬け」。塩分濃度はさほど高くなく、米麹を使用しているため長期間漬け込むと発酵が進み、ほどよい酸味とにしんの独特の風味が特徴である。北海道では、晩秋の季節になると漬け込む家庭が多く、にしん、キャベツ(札幌大球キャベツ)、大根、ニンジンなど具だくさんのものが一般的。野菜の甘み、にしんの旨味が口いっぱいに広がり、シャキシャキとした野菜の食感も楽しめる逸品である。
「ニシン漬け」は、北海道の郷土料理であり、北海道のニシン産業の歴史を物語っています。江戸時代後期から明治時代にかけて、特に北海道の日本海側で、ニシン漁業が盛んでした。春になると、大群のニシンが産卵のために沿岸に押し寄せ、海が真っ白になるほどの「群来(くき)」が見られました。
ニシンの漁獲量は明治時代にピークに達し、一時は100万トン近い水揚げがありました。しかし、昭和30年代ごろから、群来は急激に減少し、ニシンの漁獲がほとんど行われなくなりました。現在は、厚岸湖(あっけしこ)などの湖沼とその周辺で一部のニシンが捕獲されていますが、その漁獲量は全盛期のものには及びません。
「ニシン漬け」は、かつての繁盛期から家庭で作られてきた伝統的な料理です。当時は寒い冬を乗り越えるために、食糧を貯蔵することが非常に重要でした。そのため、漬物は保存方法としてよく使用されました。冬が到来する前に、干物にした身欠きニシンと野菜を一緒に漬け込むことで、「ニシン漬け」として定着しました。ニシンの漁獲量が減少しましたが、今でも北海道の冬の家庭料理として受け継がれています。
春に捕獲されたニシンは干物に加工され、晩秋になると野菜と一緒に漬け込まれ、冬に食べるために保存されました。ニシンが豊漁だった時代には、ほとんどの家庭でこの料理が作られていました。
「ニシン漬け」の作り方
身欠きニシンを1日から2日間、木灰を溶かした水か、米のとぎ汁に浸けておきます。その後、よく水洗いし、うろこを取り除き、4~5cmほどの長さに切ります。次に、キャベツ、大根、人参などと一緒に、米麹と塩で漬け込みます。塩分はそれほど強くなく、米麹を使用して長期間漬け込むことで、発酵が進み、まろやかな味わいと共にニシンの風味と香りが増します。
大根はしなやかになるまで干したものを使い、キャベツはざく切り、人参は千切りにして加えます。一部の家庭ではピーマンも千切りにして加えることがあります。漬物容器に米麹と塩、身欠きニシン、野菜を交互に重ねて漬け込み、重石を乗せます。具材を最初から混ぜ合わせて漬け込んでも問題ありません。
昔は温かい場所に置いて保存され、特に冬になると野菜の水分が凍って、シャリシャリとした食感を楽しむことができました。しかし、現在では多くの家庭が冷蔵庫などで保存しています。
「ニシン漬け」を手作りする家庭は減少していますが、スーパーマーケットなどで手軽に購入でき、北海道全域で食べることができます。特に留萌(るもい)地方では、ニシン漁での身欠き加工の技術が伝統として受け継がれており、地元の八百屋などで身欠きニシンを使った漬物が販売されています。
主な伝承地域:留萌地方
主な使用食材:ニシン、大根、キャベツ、人参、赤唐辛子