”鉄砲汁”とは、”花咲ガニ”を味噌汁にした根室の郷土料理。花咲ガニはタラバガニの近縁種で、身がぎっしりと詰まった太い脚でジューシーな味が楽しめる人気のカニ。汁に入れても濃厚なダシが出て、カニの風味が存分に味わえる。旬は夏から秋。花咲ガニは根室近海でしか水揚げされないので、産地以外ではなかなか口にする事ができない。鉄砲汁という名は、ぶつ切りにしたカニの足を食べる時、箸を入れて身を取り出す様子が昔の鉄砲の操作に似ていることからついたようだ。
北海道の特に道東地域では、カニを使った味噌汁を「てっぽう汁」と呼びます。この料理は、古くから根室地方の漁師たちが楽しんできました。その名前の由来は、箸でカニの足をつついて食べる様子が、鉄砲に弾を詰める動作に似ていることからきていると言われています。
「てっぽう汁」の主要な材料の一つで有名なのは、根室地方で水揚げされる花咲ガニです。ちなみに、花咲ガニは「カニ」という名前がついていますが、正確にはヤドカリの仲間に分類されます(タラバガニの近縁種)。花咲ガニは、漁獲量が減少しており、収穫できる期間も6月から9月の3ヶ月間しかありません。そのため、非常に貴重な食材となっています。生の花咲ガニは茶褐色の濃い色をしていますが、ゆでると花のような鮮やかな朱色に変わることから、花咲ガニと名付けられました。また、トゲが甲羅全体にあるのも特徴の一つです。
「てっぽう汁」は、道東地域では夏から秋にかけて楽しまれてきました。しかし、現代では冷凍カニや、他の地域で冬に収穫されるカニを使用して、「てっぽう汁」を一年中楽しむことができるようになりました。
「てっぽう汁」は、主に花咲ガニが使われることが一般的ですが、北海道で採れる他のカニ、例えば毛ガニ、タラバガニ、ズワイガニなどもよく利用されます。この料理の作り方は非常にシンプルで、カニとお好みの野菜を昆布出汁で煮込み、最後に味噌、豆腐、そして長ねぎを加えるだけです。カニから出る出汁が、風味豊かで美味しい「てっぽう汁」の秘訣となります。調理が手軽で、美味しさが保たれるため、家庭でよく楽しまれる料理の一つです。
野菜の種類は家庭ごとに異なり、長ねぎや大根などが使用されることがありますが、中にはカニ本来の出汁と旨味を引き立てるために野菜を加えないスタイルもあります。
主な伝承地域:道東地域(主に根室地方)
主な使用食材:カニ、長ねぎ、豆腐、味噌